建設業許可における「財産的基礎の要件」は、許可の取得・維持のための重要な条件の一つです。これは、請負工事を遂行するための経済的な安定性と信用力を確保するために設けられており、建設業法第7条第4号および第15条第4号等に基づいています。


1. 財産的基礎の要件とは?

建設業許可の取得申請者(新規・更新・変更ともに対象)は、以下のいずれかに該当しなければなりません。これは、工事を受注・遂行するに足る経済的体力があるかを判断するためのものです。


2. 要件の具体的な内容

建設業法施行規則第3条の2によって、以下のいずれかに該当すれば「財産的基礎を有する」とされます:

(1)自己資本の額が500万円以上

  • 自己資本とは「純資産(資本金+利益剰余金等)」です。
  • 法人の場合、貸借対照表の「純資産の部」が基準となります。
  • 個人事業主の場合、事業用財産から事業用負債を差し引いた残額が自己資本となります。

(2)500万円以上の資金調達能力がある

  • 金融機関の残高証明書(500万円以上)を提出できれば該当します。
  • 借入予定の場合は、金融機関の融資証明書や借入契約書の写しが必要です。

(3)許可申請直前5年間において建設業の経営実績がある

  • 実績がある場合、500万円未満の自己資本であっても許可可能です。
  • ただし、直前5年の間に建設業を継続的に営んでいたことを証明する資料(契約書、請求書、決算書など)が求められます。

3. 注意点

● 自己資本基準と現預金は異なる

  • 「自己資本」は帳簿上の評価であり、現金預金とは一致しません。
  • そのため、自己資本が500万円に満たないが、現金預金が500万円以上ある場合は、「資金調達能力」によって要件を満たすことになります。

● 経営実績による立証は難易度が高い

  • 継続性、工事の規模、頻度、内容などを詳細に示す必要があり、税務申告書類や契約書などの整理が不可欠です。

● 許可更新の際も要確認

  • 許可を維持する場合も、更新時に同様の要件が問われるため、経営状態の健全性は継続的に保つ必要があります。

4. よくある質問(FAQ)

Q. 個人事業主でも自己資本の要件を満たす必要はありますか?
A. はい。個人事業主も、自己資本の額または資金調達能力、あるいは経営実績のいずれかを示す必要があります。

Q. 預金残高が一時的に500万円を超えればよいですか?
A. 原則としては申請時点での残高が確認されますが、継続的な資金保有が望ましく、直前数ヶ月分の通帳コピーが求められる場合もあります。


5. まとめ

判定基準要件内容提出書類の例
自己資本500万円以上の純資産貸借対照表・確定申告書など
資金調達能力500万円以上の現金等残高証明書・融資証明書など
経営実績過去5年間の建設業実績契約書・請求書・決算書など