「個人事業主として独立したので、まずは自宅を事務所にして建設業許可を取りたい」 「家賃などの経費を抑えたいから、今のマンションのままで申請したい」
建設業許可のご相談をいただく中で、とても多いのがこの「自宅兼事務所」についてです。 最初に正直にお伝えしますと、東京都において、自宅兼事務所で許可を取得するのは、皆さんが想像している以上にハードルが高いのが現実です。
「携帯電話でも申請できるようになったから、審査も緩くなったんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに電話のルールは少し変わりましたが、「場所(空間)」に対する審査基準は、実はまったく緩くなっていないのです。
この記事では、多くの申請者様が審査窓口でつまずいてしまう一番の原因、「リビングを通る動線の問題」について、東京都の実際の審査基準をもとに、分かりやすく解説します。
1. なぜ東京都は「自宅」に厳しいの?
そもそも、なぜ東京都はこれほどまでに自宅兼事務所を厳しくチェックするのでしょうか。 それは、建設業法という法律が、営業所を単なる事務作業場ではなく、「請負契約を結ぶための場所」と考えているからです。
建設業の営業所とは、お客様や下請け業者様をお招きして、数百万、数千万円という大きなお金が動く契約書にハンコを押す場所です。
審査官の方は、こう考えます。 「生活感あふれる空間で、本当にきちんとした契約ができるのかな?」 「家族のプライバシーと、お客様の大事な情報が混ざってしまわないかな?」
この心配事を解消できない限り、許可は下りません。他の県では「実態があればOKですよ」と通るような間取りでも、東京都では「形としてきっちり分かれていないとダメ」と判断されることがよくあるのです。
2. 審査の重要ポイント:「生活動線」が混ざっていないか
では、具体的にどんな間取りだとNGになってしまうのでしょうか。 一番多くて、対策が難しいのが「お仕事部屋に行くために、生活空間を通らなければならない間取り」です。
よくあるNG例:リビング通過型
例えば、2LDKのマンションにお住まいで、玄関から一番奥にあるお部屋を「事務所」にしているとします。 そのお部屋自体は、デスクや書庫も揃っていて、お仕事専用の空間として完璧に整っています。
でも、もしそのお部屋に行くために、玄関で靴を脱いで、ご家族がくつろいでいる「リビング・ダイニング」を通らないといけないとしたら…?
残念ながら、東京都では許可が下りない可能性が高いです。
NGの理由
- お客様が打ち合わせに行く途中で、ご家族の生活(食事中だったり、洗濯物があったり)が見えてしまうから。
- 公私混同とみなされてしまい、「独立した営業所」とは認められないから。
東京都の審査では、提出する図面や写真をもとに、「玄関から事務所までの道のり」をとても細かくチェックされます。「ドアは何枚ありますか?」「その途中に何が置いてありますか?」と、かなり具体的に聞かれると思って準備しておく必要があります。
許可が下りる間取りの例
逆に、これなら大丈夫!という間取りは、次のようなものです。
- 玄関のすぐ横にお部屋がある: 玄関を入ってすぐの廊下に面してお部屋があり、リビングを通らずに入れるならOKです。
- 専用の出入り口がある: 勝手口などがあって、ご家族用の玄関を使わずに直接事務所に入れる場合もOKです。
3. パーテーションやカーテンは「壁」ではありません
「リビングの一角をカーテンで仕切って事務所にしました」 「突っ張り棒でパーテーションを立てました」
これも、残念ながら東京都では原則NGとされています。 東京都が認める「区画」とは、天井から床まで固定された壁やドアのことなんです。
- アコーディオンカーテン
- 布のカーテン
- 背の低いパーテーション
- 本棚で仕切っただけ
これらは「すぐに動かせる」ので、きちんとした壁とは認められません。 厳しいようですが、リフォーム工事をして壁を作るか、あるいは別のお部屋を検討するか、それくらいの覚悟が必要なのが東京都の審査なのです。
4. まとめ:自分だけで判断せず、まずはご相談を
ここまでお話しした通り、東京都での自宅兼事務所申請は、たくさんの「見えないルール」があります。
これをご自身だけで判断して、一生懸命書類を作って都庁に行ったのに、「この間取りではダメです」と言われてしまったら…。その時のショックと時間のロスは計り知れません。
「うちはリフォームすれば通るのかな?」 「部屋の配置を変えればいける?」
その判断には、専門的な知識と経験が必要です。 おくだいら行政書士事務所では、申請前にお客様のご自宅の間取り図や写真を拝見し、「今の状態で許可が下りるか」を無料で診断しています。
もしNGだった場合でも、「ここに壁を作れば大丈夫かもしれません」「この条件なら、レンタルオフィスのほうが安く済みますよ」といった、専門家ならではの解決策をご提案します。
「自宅は無理だと思っていたけど、プロに相談して配置を変えたら通った!」 そんな事例もたくさんあります。諦めてしまう前に、まずは一度お気軽にご相談ください。