「建設業許可を取ったから、あとは5年後の更新まで何もしなくていい」

もし、社長様がそのように考えていらっしゃるとしたら、それは非常に危険な勘違いです。 建設業許可には、許可を取得した後も毎年必ず行わなければならない義務があります。それが「決算変更届(決算報告)」です。

税務署への確定申告は皆さん忘れずに行いますが、この「都庁(行政庁)への決算報告」は、ついうっかり忘れてしまう業者様が後を絶ちません。

しかし、この手続きを甘く見てはいけません。 提出を怠ると、いざという時に許可の更新ができなくなったり、最悪の場合は罰則の対象になったりすることもあるのです。

今回は、建設業許可の審査実務を知り尽くした行政書士が、なぜ「決算変更届」がそれほど重要なのか、提出しないと具体的にどんな不利益があるのかについて、徹底的に解説します。


目次

  1. そもそも「決算変更届」とは?税務申告とは何が違う?
  2. 期限は「決算終了後4ヶ月以内」!この数字を忘れないで
  3. 提出しないとどうなる?建設業者を襲う「4つの恐怖」
  4. 「税理士さんがやってくれている」は大きな間違い!
  5. 赤字でも、工事実績がゼロでも提出は必須です
  6. 期限を過ぎてしまったら…?元公務員が教える対処法
  7. まとめ:面倒な毎年の手続きは、専門家に丸投げして安心を

1. そもそも「決算変更届」とは?税務申告とは何が違う?

建設業許可をお持ちの事業者は、毎事業年度終了後に、その年度の「工事経歴」や「財務状況」を許可行政庁(東京都知事など)に報告する義務があります。これを通称「決算変更届」(または決算報告)と呼びます。

よくある誤解が、「税理士さんが税務署に申告してくれたから大丈夫だろう」というものです。 しかし、税務署への「確定申告」と、都庁への「決算変更届」は全く別の手続きです。

提出先と目的の違い

  • 確定申告:税務署に提出。「税金を納めるため」の手続き。
  • 決算変更届:都道府県(建設業課)に提出。「建設業者としての経営実態・施工能力を報告するため」の手続き。

提出する書類も、税務申告書そのものではなく、建設業法独自の様式(建設業財務諸表)に書き換える必要があります。この書き換え作業は専門的な知識が必要であり、通常の税理士業務の範囲外であることがほとんどです。

2. 期限は「決算終了後4ヶ月以内」!この数字を忘れないで

この届出には、法律で定められた厳格な期限があります。

「事業年度終了後、4ヶ月以内」

これが絶対のデッドラインです。

  • 3月決算の会社なら、7月末日まで。
  • 9月決算の会社なら、翌年1月末日まで。

税務申告の期限は「決算後2ヶ月以内」ですが、決算変更届はそれより少し長い「4ヶ月以内」です。 しかし、この「少し長い」のが仇となり、「税務申告が終わってホッとしていたら、都庁への届出を忘れていた」というケースが非常に多いのです。

3. 提出しないとどうなる?建設業者を襲う「4つの恐怖」

「届出を忘れたくらいで、そんなに大ごとにはならないだろう」 そう思われるかもしれませんが、東京都の運用は甘くありません。未提出のままでいると、経営に直結する深刻なペナルティが待っています。

① 5年後の「許可更新」ができない

これが最大のリスクです。 建設業許可は5年ごとに更新が必要ですが、東京都の手引きにはハッキリとこう書かれています。

必要な届出のない状態では、般・特新規申請、業種追加申請、更新申請又は事前認可申請は受付できません。

つまり、過去5年分の決算変更届がすべて提出されていないと、更新申請書を受け取ってもらえないのです。 更新期限直前になって「5年分溜まっていた!」と気づいても、膨大な書類を数日で作成するのは不可能です。結果として更新が間に合わず、許可を失効(廃業)してしまう悲劇が実際に起きています。

② 「業種追加」や「般特新規」もできない

「電気工事の許可も追加したい」「特定建設業にランクアップしたい」 事業が順調で、いざ次のステップに進もうとした時、決算変更届が出ていないと申請自体が門前払いされます 。 手続きが完了するまで数ヶ月足止めを食らい、その間にビジネスチャンスを逃してしまうことになります。

③ 公共工事の入札(経審)に参加できない

公共工事を受注するために受ける「経営事項審査(経審)」は、この決算変更届が出されていることが大前提です。届出がないと経審の申請はできず、結果として入札参加資格も得られません。

④ 法律上の「罰則(罰金)」がある

建設業法第50条では、届出を提出しなかった場合、「6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則が規定されています 。 実務上、いきなり逮捕されることは稀ですが、コンプライアンス重視の現在、行政指導の対象となることは間違いありません。

4. 「税理士さんがやってくれている」は大きな間違い!

多くのお客様が陥るのがこのパターンです。 「顧問税理士に全部任せているから大丈夫」

しかし、多くの税理士の先生は「税金のプロ」ですが、「建設業法のプロ」ではありません。 建設業法に基づく決算変更届には、以下のような特殊な書類が必要です。

  • 工事経歴書(どの現場を、いくらで、誰が担当したか)
  • 建設業会計の財務諸表(完成工事原価報告書など)

これらは税務申告には不要な書類です。 そのため、別途契約をしていない限り、税理士さんが勝手に都庁へ届出をしてくれることはまずありません。 「税理士さんがやってくれていると思っていた」は、言い訳にはならないのです。

5. 赤字でも、工事実績がゼロでも提出は必須です

「今年は赤字だったから出したくない」 「今年は工事を一本もやっていないから、出す必要はないだろう」

これらもよくある誤解です。 決算変更届は「業績の良し悪し」を報告するものではなく、「事業を継続していること」を報告するものです。

  • 赤字の場合:赤字のままの決算書を提出してください。
  • 工事実績がない場合:工事経歴書に「実績なし」と記載して提出してください 。

工事実績がゼロでも、それだけで直ちに許可が取り消されることはありませんが、届出自体をしないことは義務違反です。どんな状況でも必ず提出してください。

6. 期限を過ぎてしまったら…?

「この記事を読んで、慌てて確認したら去年分を出していなかった!」 「3年分溜まっている…どうすればいい?」

もし期限を過ぎてしまっていても、今すぐ提出すれば間に合います。 東京都では、期限後であっても(指導は受けますが)届出自体は受け付けてくれます。

ただし、複数年分をまとめて提出する場合、以下の点に注意が必要です。

  1. 1期分ずつセットにする 「3年分まとめて1冊」にすることはできません。1年分(1期分)ごとに書類を作成し、それぞれ別の届出として提出する必要があります 。
  2. 納税証明書が取れないリスク 添付書類である「事業税の納税証明書」は、都税事務所での発行可能年数に限りがあります(通常5年分)。あまりに長く放置すると証明書が取れず、手続きが非常に困難になります 。
  3. 始末書(理由書)の提出 場合によっては、なぜ遅れたのかという理由書(始末書)の提出を求められることがあります。

期限を過ぎている場合は、一刻も早く解消する必要があります。 「怒られるのが怖い」「書類の作り方がわからない」と放置せず、まずは専門家にご相談ください。行政庁に対して角が立たないよう、スムーズな是正対応をサポートします。

7. まとめ:面倒な毎年の手続きは、専門家に丸投げして安心を

決算変更届は、建設業許可を維持するための「命綱」です。 この手続きを怠ると、更新不可や入札参加停止など、会社の存続に関わる重大なリスクを背負うことになります。

しかし、本業で忙しい社長様にとって、毎年複雑な書類を作成し、都庁へ出向くのは大きな負担でしょう。

「面倒な手続きは、全部プロに任せませんか?」

おくだいら行政書士事務所では、建設業者様の「決算変更届の作成・提出代行」を承っております。

【当事務所に依頼するメリット】

  • 期限管理を徹底:決算時期が近づきましたら、当事務所からご案内します。「うっかり忘れ」を100%防ぎます。
  • 工事経歴書のプロ作成:経審の評点アップや、将来の更新を見据えた「正しい工事経歴書」を作成します。
  • 丸投げOK:税務申告書と工事台帳(請求書等)をお預かりするだけで、建設業会計への書き換えから都庁への提出まで全て代行します。

「数年分溜まってしまっている」という駆け込みのご相談も大歓迎です。 多摩地域(多摩市、日野市、八王子市、立川市、府中市ほか)で、許可の維持管理にお悩みの建設業者様は、ぜひ一度おくだいら行政書士事務所にご相談ください。

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